2026-07-15
Special Contents自社開発AIチャットの誕生とこれから 後篇
チャットボット「Opera AI Chat」として始まったOperaptは、1年の試行を経て位置づけが変わってきている。社内で安全に使える環境を整えるところから出発し、やがて焦点は「会話」ではなく、業務をどう効率化するかへと移っていった。
前篇で共有されたその変化を踏まえ、具体的な案件のなかで得られた手応えと、AIを業務に組み込む設計が、より明確になっていく。
写真:高橋宗正
――当初思い描いていたチャットボット的なものから、ワークフローを主軸としたエージェンティックなAIへと今は転換期にあるということでしたね。
金子 転換の具体的な動機づけとしては、旅行会社のプロジェクトが大きかったです。AIエージェントとして、高解像度で取り組めました。システムプロンプトでこんなに変わるんだ、と。
保井 少人数の人をターゲットに、0からツアーを作ります、という。サイトには「韓国3日間旅行、テーマはこれ」みたいな記事が載っていて、お客さんはそれを読んで問い合わせて、そこから相談に入る、みたいな流れです。

保井 先方がAIを使ってどうしたいかと言っていたのが、モデルプランを考えたいということと、記事を作りたいということでした。出発と到着の国、何日間か、何を見たいか、どのレベルのホテルに泊まりたいか、とか。5つくらい決めれば完全なるツアーができちゃう、というAIを作りました。その回答を記事作成用のAIに投げてやれば、記事も完成する。これがワークフローですね。
――AIを使ってやりたいことの要望がまずあって、必要な情報を与えてまとめていくという流れがOperaptの特長と合致して、スムーズにいったというわけですね。
金子 営業の仕事でも、よく見ると型があります。ただ、それを分割してワークフローとして説明するのは難しい。お客さんの話を聞いて、その仕事を構造化してワークフローに落とす、という工程自体が付加価値で、そこに我々が入れる余地があるんじゃないかと思っています。
保井 でも、AIを使いたいという場合に、そこまでやりたいことを明確化できている会社ばかりではないんです。普通、案件で「AWSを使って開発してください」とか「Next.jsで何かできないか社長に言われました」なんて言う人はいないじゃないですか。だけどAIだけ、「AIでなにかできないか」という目線で探している感じがしてしまっているというか。
藤岡 私が長くやっているプロジェクトでも、お客さんのサイトの中にすこし前にAI関連の機能ができました。ただ、使ってみるとまだまだ伸びしろは大きくて。AIを取り入れるためにとりあえず入れてみました、みたいな雰囲気です。
――たしかに、お客さんが「AI使いたい、ここをAIでやりたい」とピンポイントで言ってくれるとわかりやすいですが、「なんとなくAI流行っているから使いたい」という感じだと、ワークフローの話も理解しづらいし、腑に落ちにくいかもしれません。

――短時間の商談ではすぐには伝わりづらいこともあるので、汎用チャットボットとはなにが違って、Operaptではなにが可能かというのを、どう説明するかが重要ですね。
金子 今まさにそこが一番悩んでいるところです。案件が取れるかもわからない段階でも、実際にデータを入れて作ってみないと使い物になるかどうかわからず、そこには相当なコストと根気が必要になります。一方で、AIの導入は「なくても困らない、あれば便利」くらいの温度感の企業も多くて。だからこそ、会社の資産をどう管理するかという戦略レベルの話があると、こちらも本気で入り込める感覚はあります。
藤原 明確な目的があって、そこにAIが手段としてマッチしているならやる価値はあると思います。仕事を構造化して説明するのは、AIに限らず要件定義でやってきたことですし、「AIでなにかできないか」ではなく、「課題があって、それはAIでできますよ」という順番のほうが健全じゃないですかね。

保井 AIって産業革命と同じくらいすごいと言われてきましたが、実際にはそこまでのインパクトはないのに、久しぶりに大きな技術が出てきたことで、メディアも含めて少し踊らされている感じがしています。
藤原 蒸気機関や原子力の時代にも、新しい技術だからと無理に当てはめる動きがありました。今も過渡期で、「使えないと取り残される」という強迫観念の中にいるだけなのかもしれません。
藤岡 さっき話したプロジェクトでも、最近ではナレッジベース側からも「このシステムに対してこういう機能はどうですか」という提案をしていて。その中にもAIを使ってこういうことができますよ、というのを盛り込んでいます。お客さんも、AIというのは意識していると感じますね。

藤岡 毎日何十本も記事を出しているサイトなので、全部読むのってかなり大変なんです。だから、気になるワードを登録しておいて、それに引っかかる記事だけピックアップしたり、要約したりしてくれる機能だけでもありがたいよね、とか。
藤原 なににAIが向いているのかを実は自分たちでもよくわかっていないまま、AIを入れようとしている感じはどこもありますよね。一般的に一番身近に接するAIが汎用チャットボットだから、それ以外のAIはそこと結びつかないというか。AIといえばChatGPT、的なイメージになってしまうんだと思います。
金子 どこにAIが使えるのか、あまり知られていない。「これAIでできるじゃん」というのは、AIをやってきた人だからわかる話でしかないんですよ。

金子 実は、意外とAIはクリエイティブな仕事をさせたほうがいいんじゃないかと最近は感じています。緻密さが求められる真面目な仕事よりも、レシピを作るとか、新しい商品の提案の補助をするとか、クリエイティブに寄せるのもおもしろいなぁ、と。たとえば経理とかの仕事をさせるより、そっちのほうが価値を発揮できることもあるような気がします。
保井 「惑星なんちゃらなんちゃらは西暦何年に」と書いたあとに、適当にAIに書かせたほうが、AIは適当にそれっぽいことを書くからおもしろいんですよね。
藤原 あと、僕はその分野のプロが使ったほうが、はるかに使いこなせる思っています。
保井 肉じゃがと一緒ですよね。「ビーフシチューを食べた日本人が帰ってきて『ジャガイモと人参と肉が入った煮込みが美味かった』と日本のシェフに話したら、肉じゃがが出てきた」って、有名な話があるじゃないですか。そんな感じで、結果的には違う料理になったけど、この場合は料理のプロが作るから、ちゃんとしたものが出てきた、みたいな。
金子 プログラムも、初心者がAIを使ったからといってコードを書けるようにはならない。まぁ、動いてしまうんですが。これに関しては厄介ですね。
――できる人、知っている人が使うほうが、より相乗効果が得られる、ということですね。

――当初のOpera AI Chatとはだいぶ違ってきていますが、名前が変わってOperaptとして転換期にあるからこそ、ここからまた新しい「こういうのがいいんじゃないか」というものが出てくるかもしれません。
藤原 使える手札の一つとして、これからも切っていきたいですね。手段として、「AIを使ってこういうことができます」と。Operaptは、自分たちの知見をアップデートし続けるための場所として運用し続けていきたいです。
藤岡 お客さんが「こうしたい」ということが実現できるものに、どんどんしていきたいですね。開発者目線では得られない視点も取り入れながら。
保井 お客さんにももちろん使ってほしいですが、社内運用のど真ん中に来るような方向性、たとえば勤怠管理ができたり、JSONの変換を簡単にしてくれたり。そういう細かいことが全部統合されたものになってほしいなと思います。
金子 私は逆に、いずれ大きいプロジェクトの中核パーツとしてOperaptが入っている、ということをやってみたいです。ちょっとした業務の効率化もいいですが、「Operaptを使えば、この大規模なプロジェクトが回せますよ」というような。
――可能性は無限大ということですね。さらなるOperaptの未来に期待しています。これからも頑張って開発していってください。